2015年11月15日日曜日

房総酒蔵バイクツーリング番外編 吟醸辛口「ぎんから」の謎に迫る


 千葉に引っ越してから地元の地酒に魅せられ、趣味のバイクで房総の酒蔵巡りを続けています。まだ訪問していない酒蔵もあと二軒になりました。投稿の数が増えてきましたので、房総酒蔵バイクツーリングの投稿インデックスを用意しました。

 最初にその酒「ぎんから」を目にしたのは勝浦の東灘醸造を訪問した時でした。蔵の奥様からおすすめの銘柄を聞いている最中に「吟醸辛口」というラベルの文字が目に入ってきました。どうも昔から辛口という言葉に弱いようです。他にも美味しそうな銘柄が並んでいたものの、結局辛口につられて「ぎんから」を購入して帰りました。

左が東灘醸造で購入した「ぎんから」

飲んでみると吟醸辛口と銘打っているだけあってさっぱりとした口当たりの良い味です。冷から燗まで楽しめる、上質な味に満足しました。

 その後も房総の酒蔵巡りを続けていましたが、銚子地区は規模の小さな蔵が多く場所も見つけにくいため後回しになっていました。半年近く経って、銚子漁港近くの小林酒造場を訪問した際に、吟醸辛口のラベルに惹かれて購入した酒がまたしても「ぎんから」。その時は以前購入したものと同じ銘柄であることなどすっかり忘れていましたが、帰路バイクを走らせながらず〜っと気になっていました。見覚えのあるラベル、聞き覚えのある「ぎんから」という名前。

小林酒造場で購入した「ぎんから」

帰宅後にブログの写真と見比べてびっくり。同じ「ぎんから」という名前、ラベルも瓜ふたつで左右に書かれている蔵の銘と住所が異なっているだけです。工業製品に良くあるOEMなのかなと思いながら飲んでみましたが、半年近くも前に飲んだ東灘醸造の「ぎんから」と正確な味の比較はできませんでした。ただ、飲みやすいさっぱりとした辛口であることは同じです。

東灘醸造の「ぎんから」ラベル

小林酒造場の「ぎんから」ラベル、全く同じデザインです

 ネットで「ぎんから」をキーワードに検索してみると、千葉県以外の蔵からも出荷されていることがわかりました。奥多摩登山の帰りにたまに買って帰る「澤乃井」で知られた東京青梅の小澤酒造や「箱根山」を作っている神奈川の井上酒造など、東京・神奈川・千葉・山梨の一都三県の蔵元が出てきました。

「ぎんから」を持っている蔵元は一都三県に広がっていました

これって東京国税局管内?との疑問を頼りにさらにネットで検索すると、見つけました。1995年に出された『銘酒開発協同組合の歩み「ぎんから」から「清涼吟醸酔」まで』という論文に詳しく書かれていました。東京国税局管内の蔵元有志が集まって設立した銘酒開発協同組合が開発したのが統一(共同)銘柄酒「ぎんから」でした。
  • 組合の品質管理細則に定める統一された製造方法及び製品規格に基づいて製造
  • 組合の推奨審査に合格したものを各組合員の販売ルートで市場に供給
というルールに従って各蔵元が醸造した酒になりますので、どこかでまとめて作られるOEMではありません。昭和49年に「本格辛口」として開発・出荷され、当時の甘口傾向の日本酒業界に一石を投じたのが始まりだそうです。平成5年時点で千葉県内の12軒の蔵元が、一都三県全体で36軒の蔵元が吟醸辛口「ぎんから」を製造・出荷していました。

 「ぎんから」以外にも吟醸純米酒「吟の舞」や純米原酒「やわくち」、吟醸生貯蔵酒「清涼吟醸酔」という統一(共同)銘柄酒が出ているようです。この情報を得た後に訪問する酒蔵では度々この共同銘柄酒に気づくようになりました。先日訪れた蔵の売店でこのことを尋ねてみましたが、お店の人はご存知ではないようでした。日本酒好きを自認している私自身もこのような統一(共同)銘柄酒の存在は初耳です。まだまだ勉強不足、奥の深い日本酒の世界です。

 房総の酒蔵巡りもあと二軒で一巡しますが、どちらも蔵での販売はしていないようです。直汲みや生原酒、ひやおろしなど時期によってお勧めの酒も変わってきますので訪問時期を変えながらもう一巡、二巡と酒蔵巡りは続きそうですが、各蔵の統一(共同)銘柄酒飲み比べも面白そうなテーマです。末長く房総の地酒を楽しめるよう、肝臓をいたわりつつ安全運転で房総酒蔵バイクツーリングを続けていきたいと願っています。


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