2015年1月27日火曜日

やればできる iModelaでプリント基板の製作にチャレンジ


 以前はユニバーサル基板に手配線でやっていた電子工作ですが、最近部品が小型化され、中にはSMDと呼ばれる表面実装の部品しか手に入らないものも多くなり、プリント基板を作らざるを得ない状況に追い込まれました。感光基板を使用してエッチング処理でパターンを作成し、その後ドリルで穴をあけるというオーソドックスなやり方もありますが、最近話題のパーソナルCNC切削加工機iModelaを利用したプリント基板づくりに挑戦してみました。


まずはセミナーに参加して情報収集から開始


 切削加工機はもとよりプリント基板の製作についても全くの素人ですから、まずはCQ出版社が開催しているセミナー「実習・3D切削加工機(iModela)によるプリント基板製作の勘所」に参加しました。一日たっぷりと実機を使って、プリント基板の作成ノウハウからiModelaの使用方法まで学ぶことができます。セミナーで使用している基板加工用のソフト(WINSTAR PCB for iModela)や追加工具類の入手先(PCB Milling)についても紹介され、iModela本体以外に必要なものも手に入れることができました。

個人で買える3D切削加工機iModela、見た目はおもちゃのよう

iModelaはローランドDG社の3D切削加工機の中で最も安いものです。それでも約7万円と微妙な値段ですが、上位の製品は30万円前後もしますので素人が手に入れられるギリギリの価格かもしれません。本来はプリント基板の加工には対応していませんが、先人達が工具やモーター類を工夫して基板加工の実績を積んだ機械です。


いよいよiModelaでプリント基板の作成を実践


 iModela本体以外に4万円ほどの追加費用をかけて必要なものを揃え、いよいよ自宅で実践です。まず作ってみたのがPICAXEを使った赤外線リモコン用の基板です。ユニバーサル基板で作成済みのものの改良版をプリント基板化します。

以前作ったPICAXE利用の赤外線リモコンの改良版をプリント基板化

ユニバーサル基板で作った赤外線リモコンの改造にあたり、部品点数が増えたりSMD部品の利用が必須になったためプリント基盤を作ることにしました。iModelaは三軸制御のCNCルーターとして基本的な機能は備えています。製作できる基板のサイズは縦55mm x 横86mmで、最初は小さすぎるかと思いましたが、実際に回路を設計してみるとこのサイズ以上のものを作ることはほとんどありませんでした。

パターンの設計はEAGLEを使用


 基板の加工に先立ち、やらなければならないのはパターンの作成です。パーソナルユースでは無償で利用できるEAGLEで初めてパターン作りをしてみました。片面基板を使用しますので、できるだけジャンパー配線が少なくなるように何度も部品配置と配線を繰り返しました。この作業、ボケ防止に最高かもしれません。

EAGLEでパターン設計中

満足できるパターンが完成したら、ガーバーファイルを出力してWINSTAR PCB for iModelaに引き渡します。

WINSTAR PCB for iModelaでパラメータを変えながら試行錯誤


 ここからの手順やおおよその制御パラメータの目安はセミナーで教わった通りにやりながら、試行錯誤を繰り返します。iModelaを制御するWINSTAR PCBのパラメータ指定には非常に微妙な調整が必要です。切削の深さが足りなくても、パラメータを少し大きくして再度同じ場所を掘削すれば何度でもやり直せますので、小さめの値から徐々に大きくして最良点を探ります。パターンさえ上手くできてしまえば、穴あけや基板の切断は実に見事にこなしてくれます。さすがCNC切削加工機です。

昔流行ったミニ四駆の高速モーターに交換してあるiModela

35ミクロンの銅箔を均等に削って回路パターンを作りますので、基板が水平にセットされることが一番重要です。そのため捨て板を削って水平面を作っておきます。そこに薄手の両面テープで生基板を固定するわけです。原始的な方法ですが、慣れれば結構な精度で詳細なパターンを作ることができます。今回は銅箔が削れずに残ったりしましたので、複数回同じパスを走らせたため半日仕事でした。(動いている様子はYouTubeにアップしてあります。)

iModelaで切削加工したプリント基板(同じものが二枚分です)

縦横3cm程度の片面基板二枚の作成に約半日かかりました。さらに衰えた視力で、これに半田付けするのに大変な労力が必要です。作業が終わった時にはぐったりしてしまいました。


実用的なものにはやっぱりプリント基板を使いたい


 たった一枚しか作らない場合も多いので、効率を考えるとユニバーサル基板に手配線の方がずっと早い場合も多いのですが、振動の多い場所で使う電子回路などでは信頼性の向上のためにもプリント基板を作っています。

三軸加速度計を使ったデータロガー

自転車やバイク走行中の加速度を記録するために作成したデータロガーでは、大きな振動にも耐えられるようにプリント基板を作成しました。

振動でも故障しないよう太めのパターンを採用

この程度であればユニバーサルボードで作成してもそれほどごちゃごちゃしませんが、振動で配線や半田部分に影響が出るかもしれません。プリント基板の方がはるかに安心感があります。


 iModelaはプリント基板作成を意図して設計されたものではないそうですが、それなりの手間をかけてやれば綺麗な回路基板が出来上がります。半田付けする部分以外をレジストで保護しなくて大丈夫か不安でしたが、失敗してもハンダ吸取線で余分な半田を取り除けばショートすることもなく無事動作しました。かなり細かな部品の半田付けもルーペで拡大しながら、なんとかこなせるようになりました。一枚限りの作成では決して効率化には繋がらないiModelaでのプリント基板作成ですが、量産を前提とした試作レベルでは利用価値は大きそうです。


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